株式会社キザワ・アンド・カンパニー

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聖域なきデジタル市場の生存戦略


この度、経済産業省 大臣官房 若手新政策プロジェクト PIVOTが執筆・作成した「デジタル経済レポート:データに飲み込まれる世界、聖域なきデジタル市場の生存戦略」(令和7年4月30日公開)をご紹介します。本レポートは、日本が直面している「デジタル敗戦」ともいうべき危機的状況に対し、警鐘を鳴らすものです。

データに飲み込まれる世界とデジタル赤字の危機

現代社会は、企業やサービスの付加価値がソフトウェアによって規定される「聖域なきデジタル市場時代」に突入しており、データにすべてを飲み込まれる世界(Data is Eating the World)が現実の競争環境として迫っています。サービス価値を規定するソフトウェアが売れないとハードウェアが売れず、データがなければ競争力が維持できません。

レポートでは、この国際市場と我が国産業のデジタル競争力の断絶が、国際収支の歪みとして現れる「デジタル赤字」に着目し、その構造問題を診断しています。デジタル赤字とは、著作権等使用料、通信サービス、コンピュータサービス、情報サービス、経営・コンサルティングサービスなどを含むデジタル関連収支の支払超過を示す用語です。

AI革命による壊滅的な予測

PIVOTは、デジタル赤字の構造分析を行うため、経営コンサルティング、アプリケーション、ミドルウェア/OS、SIなど8つの事業区分に細分化した独自の「PIVOTデジタル赤字推計モデル」を構築しました。

分析の結果、国内市場は低利益率・低成長率の労働集約型SI(システムインテグレーション)市場(約38%)が最大規模を占めますが、高利益率・高成長率の資本・知識集約型事業の市場シェアは軒並み外資に押さえられている現状が明らかになりました。

この構造が続くと、デジタル赤字は拡大の一途を辿り、2035年にはベースシナリオで約18兆円に達する見込みです。さらに、AI革命の影響や、ソフトウェアとハードウェアの主従逆転に伴うSDX(Software Defined Everything)化による貿易収支への浸食を考慮した悲観シナリオでは、ソフトウェア・データ由来の支払超過は最大で45.3兆円に到達する可能性があると推計されています。特に、聖域なきデジタル市場化は、日本の屋台骨である製造業をも破壊的に脅かすことが読み取れます。

デジタル敗戦を回避するための生存戦略

この危機を打破するため、レポートでは、我が国が参照すべきモデルとして、英国や韓国などが取る「国際市場進出型モデル」への移行が示唆されています。

短期的な戦略(STEP1)では、アプリケーションやミドルウェア/OSといった高利益率・高成長率事業を大規模に支援し、海外市場からの受取増加を目指します。この際、計算資源インフラの短期的な内資転換は非現実的であるため、「海外に対する計算資源インフラ支払<海外からの受取」の条件を満たすことが重要です。また、グローバル企業の戦略動向を分析する「ニブモデル」に基づき、アプリケーションサービス戦略、ソフトウェアチョーキング戦略などを実行することが求められています。

戦略実行においては、国内市場への依存(市場選択の誤り)や、資金・人材・データという3つの経営資源の相対的な不足、そしてソフトウェア・データカンパニーとしての経営戦略の不適合といった構造的なギャップを、経営者・投資家・政策担当者が一体となって解決していく必要があります。

レポートは、「飲み込む側に回るのか、飲み込まれる側に甘んじるか、我が国は最後の分水嶺に立っている」と結論づけ、官民一体となった戦略的なアクションの必要性を強く訴えています。

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