ピーター・F・ドラッカーは,「テクノロジストの条件」の中で,イノベーションについて,「イノベーションとは,未知なるものへの跳躍である。その目指すところは,新たなものの見方による新たな力である。その道具は科学的であり,そのプロセスは創造的である。その方法は,既知なるものの体系化ではなく,未知なるものの体系化である」と述べている。この場合の「新たなものの見方」とは,まさに「パラダイムの森」としてパーカーが例示している「世界観」と同義と考えて差し支えない。ドラッカーは,また「イノベーションと起業家精神」の中で,イノベーションには,組織の内部および外部に分け,信頼性,確実性の大きい順に,つぎのような7つの機会があることを述べている。
組織の内部あるいは業界の内部の人たちにとってよく見えるものとして,
組織の外部あるいは業界の外部の人たちにとってよく見えるものとして
パラダイムシフトを認識するには,まず既存のパラダイムの中で日常的に起こる問題を見過ごさず,こうした問題をうまく解決する新たなものの見方,アイデアはないかを探索することが,イノベーションを起こすうえで確実であり,信頼性が高い。異質のもの,実績のないものを人間は見ない。パーカーは,「見るから信じる」のではなく,「信じるから見える」ように人間の脳ができていると指摘する。無意識下にある価値観,常識,習慣にとらわれないためには,異質な意見に耳を傾け,自らの世界観,すなわちパラダイムの森が,物事の認識にどのように影響を与えるかを知ることが,多少困難ではあるが重要であると述べている。現代の企業を取り巻く経営環境の変化が加速しているのは,7つのイノベーションの機会のうち,業界や自己の組織の外の人々がよく見える5,6,7番目の機会が,これまでにない速度と規模で広がりつつあるからだと言えよう。
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