株式会社キザワ・アンド・カンパニー

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データが暴く世界の意外な真実5選:想像以上に良く、そして悪い私たちの現実


日々のニュースに触れていると、世界が良い方向に向かっているのか、それとも悪い方向に向かっているのか、分からなくなることはないでしょうか。私たちはしばしば、目前の出来事に圧倒され、長期的な視点を見失いがちです。

この記事の目的は、その混乱を乗り越える手助けをすることです。オックスフォード大学の研究グループ「Our World in Data」が提供する、何十年、時には何世紀にもわたる長期的なデータに基づき、世界で起きている巨大なトレンドを客観的に読み解いていきます。

データが示すのは、単純な物語ではありません。それは、人類が成し遂げた驚くべき進歩と、それと同時に存在する深刻な課題という「二つの現実」です。本稿では、その中から特に衝撃的で意外な5つのテーマを掘り下げ、私たち自身の「選択」がどのように世界を形作ってきたかを見ていきましょう。

1. 子供の命:人類史上最大の進歩と、今なお続く悲劇

歴史を振り返ると、子供の死亡率が30%を超えることも珍しくなく、幼くして命を落とすことは悲劇的にも「普通」のことでした。しかし、過去100年から200年、特にここ数十年の間に、児童死亡率は劇的に低下しました。これは人類史上、最も驚異的な進歩の一つです。

データはこの偉業が、医療への支出増加という人間による投資の結果であることを明確に示しています。そしてそこには、非常に希望に満ちた洞察が含まれています。医療費の増加は、豊かな国でも貧しい国でも、ほぼ同じ割合で子供の死亡率を低下させるのです。これは、基本的な保健医療への投資が、場所を問わず絶大なリターンを生むことを意味します。

しかし、この偉大な進歩の裏で、厳しい現実は続いています。今なお、世界では年間500万人の子供たちが5歳の誕生日を迎える前に亡くなっているのです。これは1分間に10人の子供が亡くなっている計算になります。

このテーマは、私たちが人間の選択によってどこまで進歩してきたかを認識することの重要性と、その進歩の恩恵がまだ全ての人々に平等に行き渡っていないという重い現実を突きつけます。人類が成し遂げた成果は本物ですが、私たちの仕事はまだ終わっていません。

2. 貧困:撲滅された「極度の貧困」と、大多数がまだ貧しいという現実

200年前、地球上のほとんどの人が「極度の貧困」状態にありました。それは、データが示すように「栄養失調にならない程度の食料、最低限の暖房、そして雨風をしのげる小さな住居」さえも、文字通り手に入れることが困難な生活でした。しかし産業革命以降の持続的な経済成長は、数十億人をその状態から引き上げました。これは人類史における最も重要な変化と言えるでしょう。

しかし、貧困の定義を少し変えるだけで、全く異なる現実が見えてきます。「1日2.15ドル未満」という極度の貧困ラインでは大きな進歩が見られますが、ラインを「1日6.85ドル」に引き上げると、世界の47%(ほぼ半分)が貧困層に含まれます。さらに「1日30ドル」のラインでは、その割合は84%にまで跳ね上がります。

この事実は、世界の不平等が依然として巨大であることを示しています。Our World in Data はこの事実を、力強い言葉で締めくくっています。

2世紀にわたる進歩の後でさえ、私たちはまだ初期段階にいるのです。世界の貧困削減の歴史は、まだ始まったばかりなのです。

3. 民主主義:驚くべき拡大と、史上最多の「不自由な人々」というパラドックス

200年前、民主的な権利を持つ市民は世界にほとんど存在しませんでした。一般の人々が投票し、自由が保障されるという考えは、大半の人類にとって無縁のものでした。しかし今日、数十億人が民主主義国家に住んでおり、これは歴史的に見て驚異的な権利の拡大です。

ここに、直感に反するパラドックスが存在します。データが示すのは、「民主主義の拡大よりも速いペースで世界人口が増加した」という事実です。その結果、民主的な権利を持たずに暮らす人々の「絶対数」は、人類史上最多となっているのです。

進歩は決して一方通行ではありません。例えば、14億の人口を抱えるインドが2017年、一部の主要な指標で「選挙独裁制」に再分類されました。このような一つの変化が、統計上、いかに多くの人々の権利後退を意味するかを考えると、民主主義の進歩が決して保証されたものではないことが分かります。

4. 飢饉:ほぼ根絶された「天災」と、人間が作り出す「人災」

かつて人類は、周期的に発生する大規模な飢饉に苦しめられてきました。しかし、人間のイノベーションがこの状況を一変させました。農業科学による収穫量の増加、医療の改善、グローバルな貿易の拡大、食料価格の相対的な低下、そして極度の貧困の減少。これらの要因が組み合わさり、現代において大規模で致命的な飢饉は非常に稀なものになりました。人口増加が必然的に飢饉を招くというマルサス的な考えは、こうして覆されたのです。

ただし、飢饉が完全になくなったわけではありません。データが示す厳しい現実は、現代で発生する致命的な飢饉は、ほぼ常に「紛争」と関連しているということです。戦争は食料生産を破壊し、交易路を遮断し、病気を蔓延させ、そして決定的に人道支援の到達を妨げます。

ここから得られる教訓は明確です。人類は自然の脅威に対しては大きなレジリエンス(回復力)を獲得しましたが、私たち自身の行動、つまり紛争が、新たな悲劇を生み出す最大の要因となっているのです。

5. 男女格差:縮まる賃金格差と、根深く残る「見えない壁」

多くの国で、男女間の賃金格差が近年縮小傾向にあるというポジティブなデータがあります。しかし、なぜこれほどの格差が依然として根強く残っているのでしょうか?データは、問題が単なる賃金以上の、より深い構造にあることを示唆しています。

それは一枚の「見えない壁」のようです。例えば、インドでは女性が男性の約10倍もの時間を育児や介護といった無償ケア労働に費やしています。この膨大な負担は、女性が高賃金の仕事に就く機会を直接的に奪います。その結果、女性は保育や介護といった、社会に不可欠でありながら低賃金な職種に偏りがちになります。

さらに、多くの国で子供を持つことで女性の収入が長期的に打撃を受ける「マザーフッド・ペナルティ」も確認されています。世界の企業で女性がトップマネージャーである割合は約18%に過ぎず、指導的立場への道も閉ざされがちです。

問題は社会規範だけではありません。驚くべきことに、女性が男性と同じ職業に就くことを妨げる「明確な法的障壁」が今なお存在する国もあります。さらに、多くの低所得国では、女性が自身で稼いだお金の使い道に関する決定にさえ関与できないという、家庭内での深刻な権力不均衡もデータは明らかにしています。これらは個別の問題ではなく、互いに連動し、女性の機会を制限する体系的な壁を形成しているのです。

結論:データが私たちに問いかけること

本稿で見てきたように、世界は多くの点で過去より劇的に良くなりました。同時に、依然として深刻な課題と不平等を抱えています。この「二重の現実」を直視することが、世界を正しく理解するための第一歩です。

重要なのは、これらのトレンドが自然に起きたわけではないということです。データは、進歩が人間の「ポジティブな選択」の結果であることを示しています。それは科学技術の革新、賢明な政策、公衆衛生への献身的な取り組みでした。一方で、今なお残る深刻な問題は、人間の「ネガティブな選択」や、私たちが作り出してしまった欠陥のあるシステムに起因しています。紛争、差別、根強い社会規範、そして制度の不備です。

進歩が可能であったという事実は、未来への希望を与えてくれます。そこで、最後にあなたに問いかけたいと思います。

データによって明らかにされたこれらの根強い課題に対し、もし私たちが集合的な知性と努力を真に集中させれば、これからどれだけの進歩が可能になるのでしょうか?

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