CO2を排出する火力発電、安全コストが膨張する原子力発電は「集中型発電」システムである。大規模な発電所から電力会社が所有する変電所および配電網をつうじて各家庭、事業主体に供給される。一方、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは「分散型発電」システムであり、分散する発電設備をネットワーク化し、大きく変動する電力の供給量と需要量を予測しながら互いに融通し合う。この分散型発電に不可欠なのが蓄電池である。発電した電力をいったん蓄積し、必要に応じて自家使用または売電することができる。すでにドイツ、日本では太陽光発電の普及を後押しする電力買い取り制度は失効が近づいており、分散型発電システムへのシフトが加速している。そのため、大容量の蓄電池の需要が急速に高まりつつある。また、川崎重工は、世界に先駆けて10万世帯に供給可能なLNG(液化天然ガス)発電船を実用化した。インドネシアなど天然ガスが豊富な地域を抱える東南アジアは島嶼が多いため、消費地の近くに発電設備を設置できるメリットは大きい。原発・火力発電事業で苦しむ日立は、ABBの送配電事業を7,000億円で買収し、IoT技術の強みを生かし、分散型発電システムの世界的な成長機会を取り込む戦略である(日経20181204,日経20181218より)。
トランプ氏の政策は、米国第一主義を理念に、ブルーカラーの工場労働者を支える男性優位の製造業を復活させることであった。その代表的な企業がGMである。米ゼネラル・モーターズ(GM)が米国内の4工場とカナダの1工場を閉鎖し、従業員14,000人を削減する。保護主義でモノの価格が上がり、消費者及び生産者の双方に影響を及ぼしている。トランプ氏が導入した鉄鋼・アルミ関税により、重要な原材料コストが増大した。米国は自動車貿易では中国に対して黒字を計上している。GMの販売台数は、米国よりも中国のほうが大きい。米国内生産がコスト増で競争力を失うのであれば、輸出向け生産工場を、中国を含む国外へ移転するほうが得策である。すでにBMWは生産を米国サウスカロライナ州から中国遼寧省瀋陽に移管した。かつてGMにとって良いことは米国にも良いと言われたが、それは遠い昔の話で、今は、GMにとって悪いことは米国にも悪いと言える(日経20181203より)。
伊藤隆俊ハーバード大博士によると、金融危機にはいくつかのパターンがある。金融危機は、家計、企業、政府の債務の水準が高まり、返済が不可能になることから始まる。1990年代後半の日本の銀行危機は不良債権型の典型である。1997年のアジア通貨危機では、民間の銀行や企業のドル建て対外債務が膨らみ、返済のためのドル調達の不安が生じた。ラテンアメリカでは繰り返される通貨危機の場合は、外国からの借入の主体が民間でなく政府である。2008~09年の世界金融危機は、米国に住む信用力の低い借り手の債務が返済不能のレベルにまで急膨張したことである。共通項はあくまで、債務の増加である。こうした視点で、現在の状況を見ると、中国の企業債務が危険なレベルまで膨張しているので、最大の不安要素である。リーマン危機以降、金融機関の債務は、自己資本規制が強化されているので、ヘッジファンドやシャドーバンク(影の銀行)を除けば、債務膨張の問題にはならない。(日経20190914より)
広東省広州市と香港を結ぶ高速鉄道(所要時間48分)が9月23日に全線開通する。香港とマカオの海上橋もほぼ完成している。産業集積を促して東京やニューヨークに匹敵する都市圏をつくる狙いがある。域内人口は約6,900万人と中国の5%に過ぎないが、GDPの12%を占める。スタートアップ企業が集積する深圳、金融センターの香港、自動車産業中心の広州、パソコン部品を製造する東莞など有力都市を抱える。2025年までに、域内GDPは310兆円(インドと同規模)、個人消費額は倍増すると予想される。香港とマカオは一国ニ制度を採用しているため、経済圏として一体化と同制度との関係が複雑となる。(日経20180913より)
香港発の人工知能(AI)スタートアップ「センスタイム」は、街頭カメラの動画1秒を24~30枚に分割し、人海戦術で意味をAIに教え込んでいく。現在、数億単位の顔データを収集している。100以上の車や人を同時識別できる。状況が複雑な市街地でも3~5秒先まで予測できる。また、カメラなどに映った人物を特定する顔認証技術は、買い物での本人確認や防犯など様々な分野で利用が広がる。監視カメラの世界市場規模は2018年に15年の倍以上に膨らむ。「センスタイム」は、人の美しさを人工知能で点数化するソフトも開発。美女か美男子かという判断について数百万人のデータを読み取り、測定基準を、顔の輪郭や目や鼻の大きさや配置など100以上の点を測定分析して、100点満点で算出することができる(日経2018年7月19日より)。
アリババ集団の「芝麻(ゴマ)信用」は、個人情報の公開、交友関係、返済能力、信用力、行動特性の5つの視点で信用度を350点(最低)から950点(最高)で格付けするAIを運用している。高スコアだと低金利で多額のお金を借りられるほか、レンタカーやホテル宿泊で保証金が不要になる(日経2018年7月18日より)。
ジュネーブ国際高等問題研究所教授のボールドウィン氏は、グローバル化は第三の波が始まっていると洞察する。グローバル化の本質は、価格差異を利用して稼ぐ裁定取引。第一はモノ、第二は技術・ノウハウ、第三は労働サービスの裁定取引である。労働―サービスの代表的な形態として、世界のフリーランス労働者がネットをつうじて求人、面接、採用、賃金支払いを完結する。経験や知識をつうじて働く医師、弁護士、学者などの高学歴・高所得の仕事にも影響する。たとえばケニアの医者が英国の患者に医療相談サービスを低料金で提供するといったケースである。自動翻訳の発達で言葉の問題は急速に解決されつつあり、また、国際サービス労働者を仲介するプラットフォームが続々と生まれてきており、今後、大きなトレンドになると思われる(日経2018年6月5日)。
滋賀県草津市のダイキン工業志賀製作所の研修所「道場」は、日立製作所の支援を得て、IoTで匠の技術をデジタル化(形式知化)する仕組みを導入した。その結果、溶接技術の修得にかかる期間を半分にすると同時に、コツ、勘に大きく依存する職人技術をほぼ完全な標準化を可能にした。芸術やスポーツの分野でも、データが匠の技を再現できるになってきている。例えば、AIがシュールな印象派の画家が描いたとしか思えない絵を描かせることができる。しかし、本質は、あくまで巨匠の絵画のデータをまねてイメージを伝えているだけで、「絵画そのもの」を想像しているわけではない。体操フォームを分析するAIもあるが、難易度の高い新しい技を考えるわけではない。データやデータをもとに動く機械があらゆる分野で人間を教育するようになる。だからこそ、データにはできない人間ならではの世界に注意を向ける必要がある。芸術や武道の修行の道を三段階で示す「守破離」という言葉がある。師匠を教えを守り身に付ける「守」、身に付けたものを発展させる「破」、新しいものを生み出す「離」。データでは「守」までしかできない。破、離に至るには「感性や創造性」がかかせない。今後、データが教育を担う時代になっても、感覚を研ぎ澄まして新しい世界をつくる役割は人間のものであり続けてほしい(日経2018年5月18日より)
読売新聞に、2018年5月4日号にクラウス・シュワブ氏(世界経済フォーラム会長)とのインタビュー記事が掲載されていた。人類の歴史の画期を4つの産業革命としてシュワブ氏は説いている。すなわち、①第一次産業革命:15C中~16C中「地球は宇宙の中心ではない」ことを発見(ダビンチ、ミケランジェロ、コペルニクス、ガリレイ)②第二次産業革命:19C 「人間は科学的進化の一部である」ことを発見(ダーウィン)、③第三次産業革命:19C中~20C前半、「我々の意思決定が意識的ではなく、無意識に大きく影響されつつある」ことを発見(フロイト、④第四次産業革命:21C 「コンピュータのほうが人類よりも優れたアルゴリズムを作ることができる」(シンギュラリティ―)ことを発見(AIなどIT技術)である。シュワブ氏は、現在、人類が取り組むべき2つの問題があると説く。第一に、冷戦後、自由や民主主義、人権という共通の価値にしたがって世界が協力可能であることを信じたが、「概念」を異にする強国がまた台頭しつつある。共通利害は共有できるが共通価値がない。第二に、人類が、第四次産業革命に我々がどう習熟するか。変化を恐れ習熟できない人々は、今のところナショナリズム、ポピュリズムなど過去の問題解決にすがろうとしている。
日経新聞(「ポスト平成の未来学」(日経2018年5月18日))に、技能伝承の将来をイメージするうえで参考となる記事を読んだ。要約はつぎのとおりである。
滋賀県草津市のダイキン工業志賀製作所の研修所「道場」は、日立製作所の支援を得て、IoTで匠の技術をデジタル化(形式知化)する仕組みを導入した。その結果、溶接技術の修得にかかる期間を半分にすると同時に、コツ、勘に大きく依存する職人技術をほぼ完全な標準化を可能にした。芸術やスポーツの分野でも、データが匠の技を再現できるになってきている。例えば、AIがシュールな印象派の画家が描いたとしか思えない絵を描かせることができる。しかし、本質は、あくまで巨匠の絵画のデータをまねてイメージを伝えているだけで、「絵画そのもの」を想像しているわけではない。体操フォームを分析するAIもあるが、難易度の高い新しい技を考えるわけではない。データやデータをもとに動く機械があらゆる分野で人間を教育するようになる。だからこそ、データにはできない人間ならではの世界に注意を向ける必要がある。芸術や武道の修行の道を三段階で示す「守破離」という言葉がある。師匠を教えを守り身に付ける「守」、身に付けたものを発展させる「破」、新しいものを生み出す「離」。データでは「守」までしかできない。破、離に至るには「感性や創造性」がかかせない。今後、データが教育を担う時代になっても、感覚を研ぎ澄まして新しい世界をつくる役割は人間のものであり続けてほしい。

Webからもお問い合わせ・ご相談を受け付けております。