現代社会は、かつてないほど変化のスピードが速く、何が正解かを見極めるのが難しい時代です。生成AIやロボティックスの登場、地政学的な不安、環境問題の深刻化…。これらは私たち一人ひとりに、常に新しい判断と適応を迫ってきます。まさに「羅針盤なき航海」のような状況ですが、こうした時代にこそ求められるのが、自分の内側に「揺るがない軸」を持つことです。
この「軸」を考える上で参考になるのが、哲学者カントと社会心理学者エーリッヒ・フロムの思想です。二人は時代も背景も異なりますが、人間が自由に、そして誇りを持って生きるために必要な基盤を示してくれています。
カントの示した「自律」の思想
カントは「人間は他律ではなく、自らに与えた法に従って生きる存在である」と語りました。つまり、外部の権威や流行に振り回されるのではなく、自分自身の理性に基づいて行動することこそが、人間の尊厳の根源だということです。
現代のビジネス環境を考えてみましょう。業界の常識や目先の利益に流されることなく、自らの価値観や使命に基づいて判断を下すことができる人材は、組織にとって不可欠です。これは単なるスキルではなく、「社会人基礎力」の中核をなす力でもあります。
フロムの「生きる勇気」と人間性
一方、フロムは著書『自由からの逃走』などで、人間が「自由」を与えられるとき、その重さに耐えられず、かえって権威やシステムに逃げ込んでしまう危険を指摘しました。フロムの問いは鋭いものです。「あなたは自由を恐れず、真に自分の人生を生きているか?」
フロムは、人間に必要なのは「持つこと」ではなく「あること(being)」だと説きました。肩書や財産といった外的なものではなく、他者とつながりを持ち、創造し、愛する力こそが人間を人間たらしめる。これは企業社会においても極めて重要です。数値や成果だけでなく、仲間との信頼関係や、誇りを持ったものづくりこそが、組織を強くするのです。
現代の社会人基礎力と結びつける
経済産業省が提唱する「社会人基礎力」には、前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力が掲げられています。これをカントとフロムの視点から見直すと、次のように整理できます。
こうして見ると、哲学や心理学の知恵は決して抽象的なものではなく、現代の職場に直結する「実践的な軸」なのだと理解できます。
揺るがない軸を持つ人材の価値
今の時代、技術や市場の変化は予測困難です。そうした状況で真に価値を発揮するのは、マニュアルや過去の事例に頼るだけの人ではなく、自分の内側に羅針盤を持ち、仲間と協働しながら未来を切り拓ける人です。
企業にとっても、単なる「使える人材」ではなく、「共に未来を築く仲間」として信頼できる人材こそが求められています。カントの「自律」とフロムの「あることの勇気」は、まさにそのための指針となるのです。
結びに:哲学を日常へ
哲学や心理学の思想は、難解で遠い存在に思えるかもしれません。しかし実際には、私たちの日常の一つひとつの判断や行動に深く関わっています。「自分は何を大切にして生きるのか」「どのように仲間と関わり、社会に貢献するのか」。これを問い続けることが、自分の軸を磨くことにつながります。
羅針盤なき時代だからこそ、私たち一人ひとりが「揺るがない軸」を内に育てること。それが社会人基礎力を強化し、より良い組織と社会をつくる第一歩なのです。
~ハラリ教授の講演から考える、人類と地球の未来~
最近視聴したハラリ教授の講演は、非常に示唆に富んでいました。特に印象に残ったのは「人類間の信頼」と「生物圏との信頼」という二つの柱が、これからの人類の生存に不可欠だという指摘です。ここでは、その考えをもとに、AI時代にどう生きるべきかを考えてみます。
1 人類間の信頼が揺らぐとき
人類の歴史は「共有された物語」によって大規模な協力を可能にし、繁栄を築いてきました。ところが今、AIの急速な進化に伴い、私たちは大きなパラドックスに直面しています。
このままでは社会は分断され、不信が深まる一方です。だからこそ、透明性を高め、AIによる偽情報を防ぐルールや、学際的な研究の仕組みが不可欠になっています。
2 生物圏との信頼を忘れない
AIの話題に目を奪われがちですが、ハラリ教授は「人間は外部の環境を信じなければ1分も生きられない」と語りました。呼吸ひとつとっても、私たちは空気が無害であると信じているからこそ可能なのです。
AIがどれほど進化しても、私たちには体があり、食べ物や水、空気が必要です。つまり生存は常に「地球環境」に依存しています。環境を壊す行為は、信頼の基盤を崩すことであり、最終的には自らの死につながるという厳しい現実を忘れてはいけません。
3 信頼をどう取り戻すか
結論として、人類に必要なのは「二つの信頼の再構築」です。
① 人類間の信頼:協力と合意形成を取り戻すこと
② 生物圏との信頼:地球環境を健全に保つこと
この二つは切り離せない、生存戦略の両輪です。人間には自己修正の力も、協力の力もあります。学術界、政府、企業、市民それぞれが「重みを共有している」という認識を持ち、一歩ずつ信頼を積み直すことが、AIを安全に活かし、持続可能な未来をつくる唯一の道なのです。
今後の社会やビジネスを考えるうえで、私たちは「AI技術」だけでなく、「人と人の信頼」「自然への信頼」をどう築くかを問い直す必要があるのだと思います。
2025年3月16日、慶応大学で開催されたX Dignity Centerでのユヴァル・ノア・ハラリ氏と伊藤学長と対談をNotebookLMを用いて作成したものです。
AIの技術革新の問題を解決するよりも、人間社会の信頼関係の問題を解決することが先決。
なぜならば、AIは人間行動様式を学ぶからです。人類の幸福のために、責任ある選択を迫らています。
このエッセイは、TouTubeに投稿されたユバル・ノア・ハラりのインタビュー動画をもとに、NotebookLM(生成AI)を用いて解説したものです。
AIの進化は、人類の生存基盤と社会構造に対して、過去のいかなる技術革新とも異なる根本的な変化をもたらすと、情報源では論じられています。
ハラリ氏は、AIを単なる道具ではなく、ホモ・サピエンス・サピエンスに取って代わる可能性のある「新種の種の台頭」と捉え、「異質な知能(alien intelligence)」として表現しています。
以下に、AIがもたらす生存と社会構造への根本的な変化を詳述します。
1 人類の地位の根本的な変化:エージェントとの競争
AIはツールではなくエージェントである
AIの最も重要な特徴は、これまでのすべての人間の発明品(活版印刷機や原子爆弾など)が単なる「ツール」であったのに対し、AIは「エージェント」であるという点です。
地球上の最も知的な種の地位の喪失
人類は数万年にわたり、地球上で断トツに最も知的な種であったことで、アフリカの一隅にいた取るに足らない類人猿から、地球と生態系の絶対的な支配者へと上り詰めることができました。しかし、AIの出現により、人類は初めて地球上に真の競争相手を持つことになります。
2 社会構造と中核的な制度の変容
AIは、あらゆる分野で社会構造を根本的に変革する可能性を秘めていますが、その社会的・政治的結果が明確になるまでには時間差(タイムラグ)が生じます。
「無用な階級」の出現と経済
AIは、多くの仕事、特に現在ではホワイトカラーの仕事を置き換える可能性があり、これにより「無用な階級(useless class)」が出現する懸念があります。
宗教と権威の再定義
テキストに基づいた宗教(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教など)において、AIは大きな変化をもたらします。これらの宗教はテキストに権威を置きますが、これまでテキストが自ら解釈したり質問に答えたりできなかったため、人間が仲介者として必要でした。
「デジタル移民」の波
AI革命は、国境を越えることなく光速でやってくる「デジタル移民」の波として捉えることができます。これらのデジタル移民は、人々の仕事を奪い、既存の文化とは非常に異なる文化的なアイデアを持ち、政治的な権力を獲得しようとするかもしれません。
3 人類の生存をかけた課題:倫理と信頼性の問題
AIが人類の目標と利益にアラインメント(整合)を保つよう設計する方法について議論されていますが、その成功には大きな問題が伴います。
指示ではなく行動のコピー
AIを「慈悲深く、人類に有益なもの」として設計し、特定の原則を教え込もうとしても、AIは世界中の人間の行動にアクセスしてそれを監視します。
力(パワー)と知恵(ウィズダム)の乖離
人類史の大きな問題は、力を獲得することに非常に優れてきた一方で、それを幸福や知恵に変換する方法を知らないことです。人類は原子を分裂させ、月へ飛ぶことができますが、石器時代よりも著しく幸せになっているわけではありません。
AI革命を主導する国々や企業が軍拡競争に陥っている状況では、AIの潜在的な危険性を認識し、速度を落とすことが望ましいとわかっていても、競争相手に遅れをとることを恐れて実行できません。
信頼の回復が最優先事項
AIによるポジティブな未来を実現するためには、AIに頼るのではなく、人類自身の問題を解決することが重要です。
最も重要な鍵となる問題は、信頼と協力の崩壊です。現在、人間が互いに激しく競争し、信頼し合えない世界において、AIが人類の信頼問題を解決してくれるという希望は叶いません。
ハラリ氏は、「まず人間間の信頼問題を解決し、それから一緒に慈悲深いAIを創造する」という優先順位を逆転させるべきではないと主張しています。人間が激しい競争に従事し、互いに信頼できない限り、生成されるAIは猛烈で競争的で信頼できないAIになるだけです。
アーサーのテクノジー進化論を解説したポッドキャストをご試聴ください。
製造業の現場は、いま大きな転換点にあります。自動化、IoT、AI、脱炭素、そしてグローバルな競争圧力。これらの要素が複雑に絡み合い、従来の「効率化」だけでは生き残れない時代になっています。では、私たちはどのような視点でイノベーションや組織改革に取り組めばよいのでしょうか。
ここで参考になるのが、経済学者 W・ブライアン・アーサー の「テクノロジー進化論」です。彼は、テクノロジーがどのように生まれ、進化していくかを体系的に整理し、その原理を明らかにしました。
アーサーによれば、テクノロジーには次の3つの原理があります。
アーサーの進化論は、単なる技術解説ではありません。組織や経営にとっても強い示唆を与えてくれます。
アーサーは「テクノロジーは生態系のように進化する」と言います。つまり、企業もまた「変化し続ける有機体」としてとらえる必要があります。
こうした考え方は、いま多くの製造業が直面する デジタル化 × 人材不足 × サステナビリティ という課題を解く大きなヒントになります。
アーサーの進化論は、テクノロジーを「道具」ではなく「進化する体系」として捉え直すことを促します。
製造業におけるイノベーションや組織改革は、「何を導入するか」よりも 「どう組み合わせるか」「どう学び続けるか」 にかかっています。
その視点を持つことで、現場の改善も、組織の変革も、持続的な進化の一部に変わっていくのです。
生成AIは、驚くべきスピードで私たちの生活やビジネスに浸透しています。人類が積み上げてきた知識を取り込み、あらゆる質問に「もっともらしい答え」を返すことができる。それは便利で効率的ですが、同時に大きなリスクもはらんでいます。
たとえば、マーケティングのキャッチコピーを考えるとしましょう。AIを使えば一瞬で「無難なフレーズ」を大量に出してくれます。しかし、誰もが同じツールを使い、似たような表現を選ぶと、広告はどれも似たり寄ったりになります。企業戦略も同様です。AIに頼り切ることで、かえって差別化が難しくなり、競争は激しくなる一方かもしれません。
では、AIは本当に多様性を奪う存在なのでしょうか。実はそう単純ではありません。AIの出力には文化的な偏りがあり、質問の仕方次第で答えが大きく変わります。さらに、AIは既存の知を組み合わせるのは得意でも、現場での失敗や偶然から生まれる「想定外の発想」までは生み出せません。むしろAIが均質化を促すほど、逆説的に人間ならではの経験や文化に根ざした視点が光を放つのです。
たとえば、新製品開発の現場では「ユーザーの不満」や「小さな違和感」がブレークスルーのきっかけになります。AIが提示する「常識的な解決策」は役立つ一方で、それを疑い、実際に試し、失敗から学ぶことでしか得られない知見があります。トヨタの改善活動やシリコンバレーのスタートアップ文化が示すように、「小さな実験と失敗を繰り返すこと」が大きな革新につながっていくのです。
では、私たちはAIとどう付き合うべきでしょうか。大切なのは「AIの答えを出発点にする」ことです。AIが示す常識をそのまま受け入れるのではなく、「本当にそうなのか?」「別の可能性はないか?」と問い直し、実験で確かめる。そこにこそ、未来の競争力の源泉があります。
生成AIは確かに同質化の圧力を強めるかもしれません。しかし、私たちが批判的に活用し、失敗を受け入れる文化を育てるなら、AIはむしろ多様性を強化する触媒になり得ます。
AIの答えを鵜呑みにするか、それとも問い直しの材料にするか。そこに、人間と企業の未来がかかっているのではないでしょうか。
研究レポートを解説した6分弱のポッドキャストをご試聴ください。
哲学者・和辻哲郎は、人々の心のあり方や思考様式は、その土地の自然環境や歴史的背景、すなわち「風土」によって深く形づくられると説きました。この精神的な特徴は、たとえ経済システムや社会構造が変化しても、簡単には変わりません。なぜなら、それは長い時間をかけて人々の“潜在意識”に根付いているからです。
潜在意識とは、私たちが普段自覚していないものの、考え方や行動に大きな影響を与える心の深層です。例えば、新しい働き方が「正しい」と頭では理解していても、「なんとなく違和感がある」と感じることがあります。これは、風土によって培われた古い価値観と、新しい論理との間の“矛盾”です。この矛盾は、しばしば個人や組織に心理的な葛藤やエネルギーの浪費を引き起こします。
人間の脳は、この矛盾を放置せず、無意識のうちに解決を試みます。しかし、論理だけでは解決できない心の葛藤を乗り越えるためには、まず「自分の中に矛盾がある」と自覚することが不可欠です。
この矛盾を建設的に乗り越える手法の一つが「弁証法」です。弁証法とは、ある考え方(正)とそれに矛盾する考え方(反)をぶつけ合うことで、両者を超えたより高次元の新しい考え方(合)を生み出す思考プロセスです。企業組織においては、個人が抱える矛盾を「集団全体」で共有し、議論を通じて新しい前提や行動様式を創造していくことが求められます。例えば、終身雇用が当たり前だった時代に育ったベテラン社員と、流動的なキャリアを志向する若手社員の間にある「仕事観の矛盾」を考えてみましょう。この矛盾を単なる世代間の対立として片付けるのではなく、それぞれの価値観を深く理解する対話を行うことで、「個々の専門性を活かしつつ、組織全体の目標に貢献する」という新しい協働の形が生まれるかもしれません。
対話の目的は、単に意見を調整することではありません。それは、物理学者であり哲学者でもあるデビッド・ボームが提唱した「意味の共有」にあります。組織は、仕事の分担(分業)と協力(協働)によって成り立っています。分業には上下関係や役割分担が必要ですが、全体が一つの目的に向かって動くためには、共通の「意味」が必要です。
もし組織内で「何のために働くのか」「私たちの仕事の本当の価値は何か」といった意味が共有されなければ、組織は個々の部品がバラバラになった時計のように機能不全に陥ります。しかし、人間社会は機械とは異なります。生命体のように、相互に影響を与え合いながら自ら秩序を作り出す「自己組織化」の能力を持っています。だからこそ、たとえ一時的にバラバラになっても、対話を通じてもう一度つながり直し、新たな秩序を生み出すことができるのです。
日本の哲学は、この「つながり」の思想を深く探求してきました。西田幾多郎は、個人の意識の奥底には「絶対無」という、すべてを包み込む根源的な場があると説きました。これは、個人の立場を超えた「無限の全体」とのつながりを示唆しています。この考え方は、私たちのアイデンティティが単独で存在するのではなく、他者や世界との関係性の中で成り立っているという感覚と共鳴します。対話を通じて自己の潜在意識に気づき、他者との違いを乗り越えることは、この根源的な「つながり」を再発見するプロセスだと言えるでしょう。
聖徳太子の「和をもって貴しとなす」、空海の「色即是空、空即是色」、仏陀の「無我」といった思想に共通するのは、目に見える形や個人の自我にとらわれず、すべてのものがつながり合い、変化していく「実在」に目を向けることの重要性です。対話によって「意味」を共有することは、この見えない実在、すなわち私たちにとって本当に大切なこと、守りたいことを共に探求する行為に他なりません。これは組織内に限らず、顧客、国家、そして人間と自然の関係においても、調和と創造性を生み出す鍵となります。
エッセイストの山本七平氏は、日本人の文化的背景として、神道・仏教・儒教が融合し、平等主義・能力主義・集団主義を重視する独自の価値観を育んできたと述べています。この価値観は、集団での合意形成と連帯責任を基本とした「一揆型」の意思決定スタイルに象徴されます。
この仕組みでは、上位者が課題や方針を示し、下位の集団がその具体化を議論・合意し実行に移します。決定がなされると、それに異議を唱えることは忌避され、結果がどうであれ全員が責任を負うという構造になっています。これにより、日本は長期にわたる平和(平安時代や江戸時代)を実現しましたが、その反面、異論が封じられ、失敗の責任が曖昧になるという問題も孕んでいます。
戦後、日本は米国型の民主主義を取り入れましたが、人々の深層にある文化的価値観は大きく変わっていません。個人の自由や多様性の尊重といった現代的な価値観に対して、日本社会は依然として十分に対応できていない側面があります。
社会学者エーリッヒ・フロムによれば、時代の経済・社会構造は人々の精神構造に深く影響を与えます。現代のような不確実で変化の激しい時代には、集団による秩序維持型の意思決定では限界が生じます。特に「異論=和を乱すもの」と見なされやすい風土では、未知の課題に対する自由な発想や提案が封殺されやすくなります。その結果、連帯責任は「誰も責任を取らない」無責任体制へと転じがちです。
このような組織文化では、次の3つの条件が欠けると意思決定システムが機能不全に陥ります。
これらが欠如した環境では、働く人々の内発的動機や「本当の自分」を表現する欲求が抑圧されます。
心理学者エドワード・L・デシが説く「自律性の欲求」や、フロムが語る「真の自由」は、このような抑圧された環境では満たされません。江戸時代から続く勤労観と文化的同調圧力の組み合わせにより、日本人は「偽りの自分」で生きることを余儀なくされがちです。つまり、組織の「和」を乱さぬように、本心とは異なる行動をとることが常態化し、「個性を発揮することは無意味」と感じてしまうのです。
この状態は心理的に不健全であり、精神的な分裂を引き起こします。脳は無意識下でもこの矛盾を解消しようとし、「偽りの自分」が主人、「本当の自分」が従属する構造が固定化されていきます。その結果、多くの働き手が心理的エネルギーを内面で消耗し、未来に向かう創造的な力が削がれ、幸福感を持つことも困難になります。
社会、経済の長期的な変化を予測することは大変、むずかしいことですが、今後30年の間に私たちが経験するだろうさまざまな変化のうち、そのインパクトが大きく確実に起こると思われるトレンドは、つぎの5つになります。その中で、私たち一人ひとりに課される責務を考えました。
① 少子化・高齢化にともなう生産者年齢人口の減少
健康寿命が伸び、若年労働者が少なくなり、年金など将来負担が増えます。年齢差、性差に制約を受けない職場環境が求められています。 私たちは生きがいのある職場づくりに貢献しなければなりません。
② AI(人工知能)、ヒト型ロボットの急速な普及
定型的な仕事の多くが自動化され、人間の感性を必要とする創造的な仕事が増えます。自分の仕事を分析し、よりよく、よりはやく、よりやすく物事を処理できるように、新たなデジタル技術を学習し、仕事の中に取り込んでいことが求められています。 私たちは、想像力、創造力を仕事に活かさなければなりません。
③ 個性、主体性を自由に表現できる社会の実現
組織の小さな歯車ではなく、仕事をつうじて自己を表現できるようになります。組織全体の目的と自分の個性を知り、その中での自分の役割を再定義することが求められています。 私たちは、偽りの自分ではなく本当の自分を生きなければなりません。
④ グローバル化による異文化交流機会の増大
高度な技術をもった外国人材の数が増えます。文化の異なる人びとの価値観を受け入れ、互いに個性を自由に発揮できる職場が求められています。 世界市民としての日本人でありつづけなければなりません。
⑤ 気候変動、世界的な感染症など地球環境問題の深刻化
化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが進みます。私たちの製造プロセスが人類や地球環境におよぼす影響を想像しながら、再生、再利用、共有できる機会を探求し、環境負荷を大幅に低減し、自然資源を涵養することが求められています。 私たちは、生物圏の支配者ではなく、他の生物と共生する人類として自然資源を再生しなければなりません。
トヨタが充電10分で1,200キロ(現在の2.5倍)走れる全個体電池を積んだ車両で試験走行を行ったというニュースがありました。コストが既存のリチウム電池の価格1kW時当たり14千円に比べ60~350千円と高価ですが、高級車など一部の車種では需要が見込まれそうです。EV市場で巻き返しを図るトヨタの強力な武器になると思います。
また、日立、東芝などが製造する重粒子治療、光免疫療法などがん治療における革新的な技術でトップランキング(特許競争力スコア)になっています。毎年世界で2千万人が癌にかかり、1千万人が命を落としています。ある意味膨大な市場でありますし、競争が激しい分野でもあります。
AI(人工知能)などデジタル技術を持つテック企業が市場で高い評価を得ていますが、地道にあきらめず研究をつなぎ、社会的なインパクトの大きなテクノロジーを生み出す研究者、技術者の実直さにより高い評価が与えられてもおかしくないと思います。
2023年6月18~19日、米国務長官のブリンケン氏が訪中し、習近平国家主席、王毅共産党政治局員、秦剛国委員兼外相と会談しました。対立点を明確にしつつ対話を進めるという外交の王道が復活しました。我が国も冷え込んでいる日中関係を見直すタイミングに来たと思う。
また、同月17~23日に予定されている天皇皇后両陛下のインドネシア訪問では、日本の地道な地下鉄などインフラ支援、オランダとの独立戦争で元日本兵が共に戦った歴史などが紹介されました。不幸な歴史もありますが、同国との精神的なつながりは、日本の財産であるように思います。
98歳になったマレーシアのマハティール首相は平和外交の歴史のある日本のリーダーシップに期待を寄せています。韓国同様、マレーシアとも不幸な歴史を共有していますが、それを乗り超えようとする地道な対話や協力が本当の安全保障なのかもしれません。
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