株式会社キザワ・アンド・カンパニー

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組織内のコミュニケーション能力を強化する


1.参加型思考は共同体に不可欠である

量子力学の世界的権威で物理学者・哲学者として有名なデヴィッド・ボーム博士は、著書「On Dialogue」の中で、対話の重要性を再認識すべきであると論じています。人類は、狩猟採集生活を営んでいた100万年の間、20~50人規模のグループで車座になり「対話(dialogue)」を行っていました。対話とは、参加型思考に基づくコミュニケーションの手法であり、それは共同体に参加する人々が、共同体の本質的な意味をお互いに意識し、共有し分かち合うことによって、共同体を一つに固めるセメントのような役割を果たします。共同体の意味を共有することで、人は目に見えない人と人との絆の大切さを感じ、お互いに依存しながら協力して仕事をする関係を築くことができると述べています。

2.具体的思考が科学技術の発展を支えた

言語の発達は、人類の思考プロセスに、自分と他人とを区別する「自我」と、人間と自然を区別する「自然の支配者としての自意識」を芽生え育てる役割を強めました。とくに中世に入り、活版印刷技術が発明され、書物が普及するようになると、科学技術を探究するうえで決定的に重要な役割を果たす具体的思考能力が高まりました。科学技術は、新たな製品・市場を作り出し、経済的富を生み出す強力な役割を果たしてきました。

「自然には矛盾は存在しない」という大前提によって、真実をどこまでも探求することを基本的使命感として、物理学者、化学者などの科学者は、様々な発見・発明を行い、科学技術の発展に貢献してきました。コミュニケーション手法の中心が、共同で参加型思考を行うための対話から、共同で具体的な思考を行う「議論(discussion)」へと移りました。

3.「自分の意見=自分自身=絶対的真実」症候群

同じ共同体で仕事をする人間どうしが、互いに真実を求め共同で議論を行なおうとするとき、お互いに強い自我を意識し始めると、等式「自分の意見=自分自身=絶対的真実」が成立し、相手に議論で勝ち、自己の利益を守ろうとするワナに陥ってしまいます。自分の意見が否定されると、あたかも自分そのものが否定されたと思い込んでしまうことや、自分の意見は絶対に正しいと思い込んでしまうことはよく起こります。人間は、親、兄弟、友人、教師、同僚、上司の思考、または書物、TV、インターネットなどの媒体から、意識的にも無意識的にも集団思考を吸収しますので、個人と同様に、集団の場合でも、集団の意見や想定が否定されると、集団的自衛本能が働き、攻撃的になることがよく起こります。また、そもそも意見や考えはあくまで、抽象的な認識による想定であり、個人もしくは集団を問わず、それを全く否定できない絶対的真実と思い込んでしまうことがよく起こります。ボーム博士は、こうした思考のワナが、自己欺瞞を生み、自己矛盾を生み出す要因のひとつと論じています。

4.失われつつある参加型思考

矛盾は、社会集団間、社会集団内、個人間、個人内に巣くっています。人類の歴史は、我々に「社会現象には常に矛盾が内在する」ことを告げています。それが原因で、現在に至っても、民族、宗教、国家間での対立や紛争は絶えません。ボーム博士は、人類がこうした矛盾を生み出すのは、参加型思考にもとづく対話を組織の中で、ほとんどしなくなったことの要因のひとつであると論じています。

5.企業風土は最重要の経営課題である

企業風土を活性化させることは、多くの企業経営者にとって最重要に位置する経営課題です。企業風土は、企業文化とほぼ同義です。過去の歴史が示すように、優れた文化を持つ共同体は、繁栄しつづけます。それが理にかなっているからであると思います。文化は共同体が生み出す物事の根源的な因子(目的因、作用因、形相因、質料因)であると思います。優れた企業風土のもとでは、組織成員間の信頼関係が強く、組織にかかわる意味を共有し、互いに協力し合い、高い業績を生み出すことができます。働く人々の人生を有意義なものにするかどうかは、大きく企業風土にかかっていると思います。

6.参加型思考が働かなくなると、明晰な具体的思考ができなくなる

 参加型思考が働かなくなると、働く人々自身の中、働く人々の間、組織と顧客・市場と間、組織と協力会社との間に、幾層にわたって数多くの矛盾が蔓延します。人間は、参加型思考を働かせなくなると、自我の意識が異常に強くなり、共同体の意味をお互いに共有し相互依存関係で協力しながら仕事をし合うことをしなくなります。「お互いに協力し合えればよい仕事ができるのに、あいつと来たら自分のことしか考えない。」という言葉をよく聞くようになると、それは組織内に矛盾が蔓延し始めた兆候です。なぜなら、参加型思考では、相手の意見・想定を知り、その奥に流れる意味を感じ取り、共有することで、一つの有機体になることを目的にしているのであって、その真偽、善悪を判断することを目的にしていないからです。それゆえ、「お互いに協力したい(参加型思考)」と思うことと「自分は絶対に正しくて相手は絶対に間違っている(非参加型思考)」と思うことは矛盾しています。また、組織内に矛盾が蔓延しますと、過剰なストレスが生じ、明晰な具体的思考を妨げます。

 

 

文明の発達とヒトの生命機能とのアンバランス


数百万年ともされる人類史は、99%以上が狩猟採集時代で、この間ヒトは多くの動物と同様、効率良く「動く」ために身体を進化させてきた。体を動かし続けることで、腕や筋肉、骨、血液、骨、血管など臓器が適度に刺激され、機能が維持・活性化されるのはそのためである。ところが、その後の急速な文明の発展で、現代人はあまり動かなくても便利な生き方ができるようになった。ヒトの身体は生き方の変化についていけず、動かさなければ機能不全を起こしがちである。加えて獲物があるとは限らない狩猟採集時代の本能で、最もカロリーの高いものを好んで食べ、体に蓄える特性まで持ち続けている。こうした豊かな先進社会ほど、生活習慣病が蔓延する皮肉を呼んだ。旅日記などの資料によると、江戸時代後期に盛んに行われたお伊勢参りでは、1日に60㌔超えることもざらにあった。狩猟時代は狩猟キャンプの移動では、家族で1日30㌔は歩いた可能性がある。(読売2019年1月21日)

「米国第一」政策の副作用


トランプ氏の政策は、米国第一主義を理念に、ブルーカラーの工場労働者を支える男性優位の製造業を復活させることであった。その代表的な企業がGMである。米ゼネラル・モーターズ(GM)が米国内の4工場とカナダの1工場を閉鎖し、従業員14,000人を削減する。保護主義でモノの価格が上がり、消費者及び生産者の双方に影響を及ぼしている。トランプ氏が導入した鉄鋼・アルミ関税により、重要な原材料コストが増大した。米国は自動車貿易では中国に対して黒字を計上している。GMの販売台数は、米国よりも中国のほうが大きい。米国内生産がコスト増で競争力を失うのであれば、輸出向け生産工場を、中国を含む国外へ移転するほうが得策である。すでにBMWは生産を米国サウスカロライナ州から中国遼寧省瀋陽に移管した。かつてGMにとって良いことは米国にも良いと言われたが、それは遠い昔の話で、今は、GMにとって悪いことは米国にも悪いと言える(日経20181203より)。

広東・香港に巨大経済圏「グレーターベイエリア」が誕生


広東省広州市と香港を結ぶ高速鉄道(所要時間48分)が9月23日に全線開通する。香港とマカオの海上橋もほぼ完成している。産業集積を促して東京やニューヨークに匹敵する都市圏をつくる狙いがある。域内人口は約6,900万人と中国の5%に過ぎないが、GDPの12%を占める。スタートアップ企業が集積する深圳、金融センターの香港、自動車産業中心の広州、パソコン部品を製造する東莞など有力都市を抱える。2025年までに、域内GDPは310兆円(インドと同規模)、個人消費額は倍増すると予想される。香港とマカオは一国ニ制度を採用しているため、経済圏として一体化と同制度との関係が複雑となる。(日経20180913より)

人の信用を格付けするAI


アリババ集団の「芝麻(ゴマ)信用」は、個人情報の公開、交友関係、返済能力、信用力、行動特性の5つの視点で信用度を350点(最低)から950点(最高)で格付けするAIを運用している。高スコアだと低金利で多額のお金を借りられるほか、レンタカーやホテル宿泊で保証金が不要になる(日経2018年7月18日より)。

グローバル化の第三の波


ジュネーブ国際高等問題研究所教授のボールドウィン氏は、グローバル化は第三の波が始まっていると洞察する。グローバル化の本質は、価格差異を利用して稼ぐ裁定取引。第一はモノ、第二は技術・ノウハウ、第三は労働サービスの裁定取引である。労働―サービスの代表的な形態として、世界のフリーランス労働者がネットをつうじて求人、面接、採用、賃金支払いを完結する。経験や知識をつうじて働く医師、弁護士、学者などの高学歴・高所得の仕事にも影響する。たとえばケニアの医者が英国の患者に医療相談サービスを低料金で提供するといったケースである。自動翻訳の発達で言葉の問題は急速に解決されつつあり、また、国際サービス労働者を仲介するプラットフォームが続々と生まれてきており、今後、大きなトレンドになると思われる(日経2018年6月5日)。

IoT、AIによる技能伝承


日経新聞(「ポスト平成の未来学」(日経2018年5月18日))に、技能伝承の将来をイメージするうえで参考となる記事を読んだ。要約はつぎのとおりである。

滋賀県草津市のダイキン工業志賀製作所の研修所「道場」は、日立製作所の支援を得て、IoTで匠の技術をデジタル化(形式知化)する仕組みを導入した。その結果、溶接技術の修得にかかる期間を半分にすると同時に、コツ、勘に大きく依存する職人技術をほぼ完全な標準化を可能にした。芸術やスポーツの分野でも、データが匠の技を再現できるになってきている。例えば、AIがシュールな印象派の画家が描いたとしか思えない絵を描かせることができる。しかし、本質は、あくまで巨匠の絵画のデータをまねてイメージを伝えているだけで、「絵画そのもの」を想像しているわけではない。体操フォームを分析するAIもあるが、難易度の高い新しい技を考えるわけではない。データやデータをもとに動く機械があらゆる分野で人間を教育するようになる。だからこそ、データにはできない人間ならではの世界に注意を向ける必要がある。芸術や武道の修行の道を三段階で示す「守破離」という言葉がある。師匠を教えを守り身に付ける「守」、身に付けたものを発展させる「破」、新しいものを生み出す「離」。データでは「守」までしかできない。破、離に至るには「感性や創造性」がかかせない。今後、データが教育を担う時代になっても、感覚を研ぎ澄まして新しい世界をつくる役割は人間のものであり続けてほしい。

 

女性社員のためのキャリアプラニングの必要性 


ここ数年来、「女性が輝く社会」の実現に向けて、女性管理職の育成、女性の活躍推進のための様々な対策や制度が導入されているが、第1子出産で約6割の女性が離職する(「男女共同参画白書平成28年版」)など、なかなか前に進まないようである。

有職女性の約9割が非管理職志向であるため、女性の管理職比率は11.3%と世界的に見ても非常に低く、会社に入れば上司は男性が圧倒的多数を占めているのが現実である。また、内閣府の世論調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に、男性の46.5%、女性の43.2%が「賛成」と答えている。このように男女の社会的役割に関する伝統的な価値観が支配的であるため、働く女性の多くが「相談してもなかなか理解してもらえない」というように社会で活躍すること自体をあきらめてしまっている。

図表は、企業と女性社員との女性社員のキャリアに関する認識ギャップを示している。企業経営者の多くは、女性が活躍できる環境を整えたいと考えている一方、女性社員の多くは、社会環境や職場環境に問題と困難さを感じている。

 

図表 女性社員のキャリアに関する認識ギャップ

こうした認識ギャップがなかなか埋まらない理由として2つ挙げることができる。一つ目は多くの女性社員が「男性の上司に相談しても、わかってもらえない」という固定観念を根強く持っているため、なかなか本音を話すことができないことである。二つ目は半数の男性が「妻は家庭を守るべきである」とする固定観念を持っているため、子育てや介護などで職業人生を中断することはやむを得ないと考えていることである。その結果、女性社員の多くが、自分自身の長い職業人生について前向きな将来イメージを描くことができないのである。

本人が「職業人生に対する前向きな将来イメージ」を持ち、職場内に「昇進を支援してくれる人」がいると、自己の能力やスキルへの自信が持てるようになるため、仕事にやりがいを持って取り組むことができるようになり、管理職への志向性が高まることが、多くのキャリアプラニングに関する研究で実証されている。

したがって、企業経営者が、「女性にとって働きやすい職場はすべての人にとっても働きやすい環境である」という信念を持ち、積極的に女性活躍の環境づくり推進する必要がある。具体的には、女性社員にワークライフバランスを重視したキャリアビジョンを描く機会を設けると同時に、職場におけるサポート体制を構築することが求められている。

株式会社 キザワ・アンド・カンパニー

専務取締役 鬼澤 佳乃子

国家資格キャリアコンサルタント

ファイナンシャル・プラニング技能士

以上

 

リーダーシップは「スタイル」か「質」か


リーダシップ論の大家であるジョン・P・コッター教授は、リーダーシップについて以下のように述べている。

 

『組織とは,本来,メンバーの才能を育み,指導力の発揮や失敗や成功から学ぶことを奨励すべきである。

リーダーシップは「スタイル」ではなく「質」である。』

 

コッター教授は、リーダーシップの本質を研究する中で、10の教訓を導き出している。

教訓1:重要な組織変革を導くのは,どのような手法であれ,息の長い仕事であり,複雑な8段階のプロセスからなる。

  1. 危機感を醸成する。
  2. 変革プロセスを手動できるだけの強力なチームをつくる。
  3. ふさわしいビジョンを組織内に伝達する。
  4. 構築したビジョンを組織内に伝達する。
  5. 社員がビジョン実現に向けて行動するようにエンパワーメントを実施する。
  6. 信頼を勝ち取り,批判を鎮めるために短期間に十分な成果を上げる。
  7. 活動に弾みをかけ,その余勢を駆って,変革を成し遂げるうえでのより困難な課題に挑む。
  8. 新しい組織行動様式を組織文化の一部として根付かせる。

 

教訓2:変革は,数次にわたる複雑なプロセスを経て完遂される。

・抵抗が強いほど,変革を成し遂げるのは難しい。利益が大きいほど,正しいビジョンを持つ必要性は大きい。組織の底辺の人々への依存度が高いほど,彼ら彼女らの参加を促す必要性は高い。

教訓3:20世紀の歴史とその時代に培われた企業文化の影響を受けた人々は,大きな変革を実行しようとする際に,皆同じような過ちを犯す(これには多くの理由がある)。有能で正しい志を持ったマネージャーですらその例外ではない。

教訓4:リーダーシップとマネジメントは別物である。

・意義あり変革を導く原動力は,リーダーシップであって,マネジメントではない。

・リーダーシップとは,ビジョンと戦略をつくり上げ,戦略の遂行に向けて,それに関わる人々を結集し,ビジョンの実現を目指している人々にエンパワーメントを行うなど,障害を乗り超えてでも実現できることである。

・マネジメントとは,計画立案,予算作成,組織化,人員配置,コントロール,そして問題解決を通して,既存のシステムの運営を続けることである。

・マネジメントは,現在の組織の運営システムをうまく機能させ続けるが,リーダーシップは,組織の運営システムそのものをよくするために,大きな変革を行う。

 

教訓5:変化のスピードが速まっているため、組織を動かすうえでのリーダーシップの重要性が高くなっている。

・マネジメントとリーダーシップの時間割合

1980年代末まで 1990年代以降
製品のライフサイクル(年数) 15年 4年
優秀なトップ・エグゼクティブの場合:

マネジメント対リーダーシップ

6:4 2:8

 

教訓6:組織を動かす人々は,マネジメントをリーダーとしての仕事の両方をこなすようになっている。

・マネージャーとしての仕事:計画と予算を策定し,階層を活用して,職務遂行に必要な人脈を構築し,コントロールすることによって,任務をまっとうすることである。

・リーダーとしての仕事:ビジョンと戦略をつくり上げ,複雑ではあるが,同じベクトルを持つ人脈を背景に実行力を築き,社員のやる気を引き出すことで,ビジョンと戦略を遂行する。

・マネージャーとリーダーに共通の仕事:課題を設定し,課題達成を可能にする人的ネットワークを構築し,課題を達成させる。

教訓7:マネジメントは組織のフォーマルな階層を通して機能する。リーダーシップは,インフォーマルな人間関係に依存する。

教訓8:リーダーは,複雑かつインフォーマルな人間関係を操りながら組織を動かす。

教訓9:命令するという仕事はさほど重要ではなくなっている。周囲の人々と仕事のうえで良好な関係を築くことが課題として重みを持つようになってきている。

教訓10:有能なマネージャーとは,①現状の維持と改革を同時に取り組み,②縦横の人間関係を良好に保ち,③命令よりも質問の数が圧倒的に多い。

・変革への準備ができている組織の特長(21世紀のリーダーシップ)は、どんなときでも危機感を高め,慢心を避けようとする。

また、チームワークを重視し,必要があれば変革の推進に向けて組織を統合することができる。

・あらゆる階層が常にビジョンを抱き,必要に応じて,その内容を修正し,多くの人に絶えず伝達する。そこで働く社員は,新しい目標に挑むように,いつでも権限が与えられている。

 

マネジメント リーダーシップ
役割

 

・演繹的に計画を策定する。

・現在のシステムに秩序と一貫性をもたらす。

・複雑性に対処する。

・帰納的に針路を設定する。

・現在のシステムを改革する。

 

・変革を推進する。

流儀

 

 

 

 

 

 

 

・込み入った環境をうまく泳ぎ切るために,計画の立案と予算策定から着手する。

・将来の目標(翌月,翌年)を定め,その達成に向けて詳細な実行ステップを決め,計画を完遂するために経営資源を割り当てる。

・発展的な組織変革の端緒を開くために,まず針路を設定する。

・将来ビジョンを実現するための変革を用意する。

・組織化と人材配置によって計画を抜かりなく達成することに取り組む。 ・1つの目標に向けて組織メンバーの心を統合する。

・互いに手を取り合って,ビジョンを理解し,その実現に尽力できる人々に新しい方向性を伝える。

手段

 

・計画を達成するための手段は,コントロールと問題解決の2つである。

・フォーマル,インフォーマルの両面から,計画と実績を綿密に比べ,両者の間にギャップが生じていないか目を光らせ,問題があれば,それと解決すべくプランを準備する。

 

・フォーマルな組織構造が,マネージャーたちの行動を条件づける。

・いかにうまく組織を設計するかが決め手。

 

・ビジョンを達成するための手段は,動機づけと啓発の2つである。

・価値観や感性といった根源的ではあるが,往々にして眠ったままの欲求に訴えかけることで,大きな障害を乗り越え,皆を正しい方向に導く。

 

 

・健全な企業特有のカルチャーを基盤にしたインフォーマルで緊密な人間関係がリーダーたちの行動を条件づける。

・いかにコミュニケーションを図るかが決め手。

社員へのアプローチ ・物事をできるだけ計画的に忠実に,しかも効率的に進めるために組織編成を行う。

職務体系,指揮命令系統の決定,適材適所の人員配置,必要に応じた研修の実施,社員への計画の説明を行う。

・計画に向けた報奨制度の用意,実施状況を把握するための仕組みづくりを行う。

 

 

 

・リーダーにとっては,信頼を得られるかどうか,伝えようとする内容を信じてもらえるかどうかが,腕のみせどころ。

・信頼されるには,それぞれの実績や誠実さ,信頼製についての評判はどうか,言行が一致しているか,伝えようとするメッセージの内容はどうか。

・組織全体に明確な針路が示されていれば,全員が同じ目標に向かうことができ,外部環境の変化にうまく対応できない無力感にさいなまれず,行動できるようになる。

 

 

企業変革の8段階

第一段階:緊急課題であるという認識の徹底

市場分析を行い,競合状態を把握する。

現在の危機的状況,今後の表面化しうる問題,大きなチャンスを認識し議論する。

 

第二段階:強力な推進チームの結成

変革プログラムを率いる力のあるグループを結成する。

一つのチームとして活動するように促す。

 

第三段階:ビジョンの策定

変革プログラムの方向性を示すビジョンを策定する。

推進チームが手本となり,新しい行動様式を伝授する。

 

第四段階:ビジョンの伝達

あらゆる手段を利用し,新しいビジョンや戦略を伝達する。

推進チームが手本となり,新しい行動様式を立てる。

 

第五段階:社員のビジョン実現へのサポート

変革に立ちはだかる障害物を排除する。

ビジョンの根本を揺るがすような制度や組織を変更する。

リスクを恐れず,伝統にとらわれない考え方や行動を奨励する。

 

第六段階:短期的成果を上げるための計画策定・実行

目に見える業績改善計画を策定する。

改善を実現する。

改善に貢献した社員を表彰し,報奨を支給する。

 

第七段階:改善成果の定着とさらなる変革の実現

勝ち得た信頼を利用し,ビジョンに沿わない制度,組織,政策を改める。

新しいプロジェクト,テーマ,メンバーにより改革プロセスを活性化する。

 

第八段階:新しいアプローチを根付かせる。

新しい行動様式と企業全体の成功の因果関係を明確にする。

新しいリーダーシップの育成と引継ぎの方法を確立する。

 

 

参考文献:

リーダーシップ論―いま何をすべきか (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス経営論集) 単行本 – 1999/12

ジョン・P. コッター  (著), John P. Kotter (原著), 黒田 由貴子 (翻訳)

著者紹介:

ジョン P・コッター

John P. Kotter

国籍:米国

肩書:ハーバード大学ビジネススクール名誉教授

生年月日:1947

出生地米国: カリフォルニア州

学歴:マサチューセッツ工科大学卒;ハーバード大学卒

経歴:

・ハーバード大学などを経て,ハーバード大学ビジネススクールの松下幸之助記念講座名誉教授。史上最年少の33歳で同校終身教職権を取得した。

・企業におけるリーダーシップ論の権威として国際的に知られ,グローバルリーダーに対する変革的リーダーシップの指導を目的としたコッター・インターナショナルの創設者でもある。

・著書に「パワー・イン・マネジメント」「ザ・ゼネラル・マネジャー」「組織革新の理論」「パワーと影響力―人的ネットワークとリーダーシップの研究」「変革するリーダーシップ」「限りなき魂の成長―人間・松下幸之助の研究」「21世紀の経営リーダーシップ」などがあり,著作は120ケ国語以上に翻訳されている。

 

 

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