インターネットを使って、海外商品を購入することを越境ECという。利用者は、自国では買えない海外の日用品や家電などを容易に買える。企業にとってもメリットは大きく、海外に進出しなくても海外の顧客が自社の通販サイトに買い物に来てくれるため、投資を抑えて拡販できる。経済産業省によれば、2019年における世界の越境ECの市場規模は18年見込み比約22%増の8,260億ドル(約90兆円)の見通しである。amazon.comや楽天などの大手インターネット通販をつうじ、日本のメーカーや小売りが越境ECのサービスを拡大している。訪日外国人が増加する日本では、外国人が日本の旅行中に商品を買うだけでなく、帰国後もネットで気に入った日本製品を買うことが増えている。(2019年2月18日日経)
上場企業の配当と自社株買いを合わせた株主還元は2018年度に15兆円超となった。予想純利益の半分が株主に還元された。本業から生まれる営業キャッシュフローは56.4兆円、設備投資やM&Aに投じた投資キャッシュフローは44.8兆円、その差額が累積して手元現金が106兆円になっている。一方、労働分配率は5年間で50%から44%へと低下している。欧米に比べ遅れているデジタル化を加速させるために、IoT、AI(人工知能)の学習など人材投資を今後増やす必要がある。(日経2019年1月19日より)
CO2を排出する火力発電、安全コストが膨張する原子力発電は「集中型発電」システムである。大規模な発電所から電力会社が所有する変電所および配電網をつうじて各家庭、事業主体に供給される。一方、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは「分散型発電」システムであり、分散する発電設備をネットワーク化し、大きく変動する電力の供給量と需要量を予測しながら互いに融通し合う。この分散型発電に不可欠なのが蓄電池である。発電した電力をいったん蓄積し、必要に応じて自家使用または売電することができる。すでにドイツ、日本では太陽光発電の普及を後押しする電力買い取り制度は失効が近づいており、分散型発電システムへのシフトが加速している。そのため、大容量の蓄電池の需要が急速に高まりつつある。また、川崎重工は、世界に先駆けて10万世帯に供給可能なLNG(液化天然ガス)発電船を実用化した。インドネシアなど天然ガスが豊富な地域を抱える東南アジアは島嶼が多いため、消費地の近くに発電設備を設置できるメリットは大きい。原発・火力発電事業で苦しむ日立は、ABBの送配電事業を7,000億円で買収し、IoT技術の強みを生かし、分散型発電システムの世界的な成長機会を取り込む戦略である(日経20181204,日経20181218より)。
伊藤隆俊ハーバード大博士によると、金融危機にはいくつかのパターンがある。金融危機は、家計、企業、政府の債務の水準が高まり、返済が不可能になることから始まる。1990年代後半の日本の銀行危機は不良債権型の典型である。1997年のアジア通貨危機では、民間の銀行や企業のドル建て対外債務が膨らみ、返済のためのドル調達の不安が生じた。ラテンアメリカでは繰り返される通貨危機の場合は、外国からの借入の主体が民間でなく政府である。2008~09年の世界金融危機は、米国に住む信用力の低い借り手の債務が返済不能のレベルにまで急膨張したことである。共通項はあくまで、債務の増加である。こうした視点で、現在の状況を見ると、中国の企業債務が危険なレベルまで膨張しているので、最大の不安要素である。リーマン危機以降、金融機関の債務は、自己資本規制が強化されているので、ヘッジファンドやシャドーバンク(影の銀行)を除けば、債務膨張の問題にはならない。(日経20190914より)
一時期、心配されたギリシャ危機は、銀行への資本注入、痛みを伴う緊縮財政の結果、最悪の状況を完全に脱し、ユーロ圏経済は弱含みながら回復に向かっています。また、米国経済は、自動車ローンの積み上がりで不良債権が増えていることが気がかりですが、雇用もしっかりしており、大崩れはなさそうです。我が国経済は、労働需給の逼迫を映して、今後、非正規社員を中心に賃金上昇が起こりつつあります。一部業種で製品サービス価格への転嫁が進み物価上昇圧力は着実に高まっています。長期金利上昇を抑えるため、現在、日銀は積極的に金融資産の買い入れを行っています。
しかしながら、世界の政治状況の目を転ずると地球温暖化、核廃絶といった人類にとって深刻なテーマに関して否定的なトランプ政権、民主化を抑え込む習政権、経済が疲弊しながらも版図奪回を夢想するプーチン政権などナショナリズムが高まりつつあります。経済が良好なうちは、国際秩序は維持できますが、未曾有の金余り状態にあるグローバルマネーは、ほんの些細な事象で経済の均衡状態が崩れ、逆回転するリスクをはらんでいます。それが何で何時かは予測できませんが、過去、金融恐慌がきっかけで、第二次世界大戦という不幸な歴史が刻まれた事実を忘れてはいけないと思います。
フランスの政治学者ドミニク・モイジ氏は、民主主義と資本主義の柱とする西側世界をけん引してきた役割が、米英から、今やドイツやフランスに移ったと指摘する。大衆迎合主義がEUを侵食しており、イタリアの国民投票で憲法改正が否決され、レンツィ首相が辞任に追い込まれた。EU加盟国内の南北んの経済格差が広まり、人々に不満が膨らむ中EU内の紐帯は緩くなってきている。欧州統合の支持率は2006年の60%から2016年に30%まで低下してる。イタリアの元世界銀行エコノミストのウーゴ・パニック氏は、もし来年のフランス大統領選挙で国民戦線のルペン党首が勝てば、反EU戦力が強まり、欧州統合が危機に瀕すると予測する。欧米諸国(日本を含むG7各国)は、ロシアや中国など大国に抗する勢力均衡としての役割を果たしてきたが、今後、大衆迎合主義の風が一段と吹けば、ますます国際情勢は混とんとせざるを得ないだろう。
フランス歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、新たな保護主義の時代に突入したと指摘する。そもそも産業発展は保護主義とともに起きた。米国はリンカーンが関税を30~40%にして始まった。欧州では、ドイツがビスマルクの保護主義で飛躍的に成長した。自由貿易が利益になる段階はあるが、行き過ぎると格差が生まれ、最先進国での工員の給与を抑制し、最終的に需要不足に陥る。行き過ぎた自由貿易は経済を停滞させる。グローバル化は特に英米で途方もない格差を生み、日独仏にもある。この格差は資本の移動の自由と、低賃金の労働力を使うことで生まれた。経済的な生き残りに必死となり、子供を持つ余裕がなくなるため、日本や韓国、ドイツでみられるように出生率は低下する。
中国でシェアリング(共有)サービスが活発である。海外でも定番となった自動車の相乗りや「民泊」に加え、乗り捨てできる自転車が急速に普及。家庭の味など個人の料理のお裾分けサービスも人気を集める。かつてのような経済成長が見込めない中、出費を抑えて快適に暮らしたいとという消費者の意識の高まりを国内発のベンチャー企業がとらえている。
フランス経済学者のジャックアタリ氏は、日米と中国の紛争が今年最大の脅威になると予想する。今日の世界は1910年ごろの世界と比較できる。当時も、科学技術は進歩し、民主主義は機能し、グローバル化が進行していた。世界が民主的で満ち足りた発展を手にすることも可能であったが、閉鎖的なナショナリズムの台頭が二度の世界大戦を生み出した。トランプ氏はロシアを友、中国を敵とみなしている。南シナ海で人工島を建設する中国の動き、核・ミサイル開発を強行し続ける北朝鮮の動きなどを加算すると、アジアは爆発寸前の状況にある。東シナ海、南シナ海で起こりうるすべてのことが心配である。もし、将来、日米と中国が戦争になれば、世界戦争に拡大する。この他に、軍事的火種は、①ロシア対ウクライナなどの旧ソ連圏、②インド対パキスタン、③中東・アフリカ中央部、そしてイスラム過激派組織「イスラム国」。「世界の警察官」はいない。米国オバマ政権時代にその役回りから降りた。米国は世界から手を引きつつある。2006年に米国から撤退する世界に警鐘を鳴らしたが、現実のものとなりつつある。
1980~90年代は貿易黒字が大きかったが、2011年度以降は貿易赤字が4年続いた。2015年度は黒字に転換したが、もとの水準にもどるほど勢いはない。1980年代後半、日米間の貿易摩擦が高まる中、我が国企業が積極的に海外直接投資を増加させた結果、現在にいたるまで、海外からの利子、配当など所得収支が持続的に増大している。加えて、2000年代から特許など知財収支が黒字化、2014年度以降は、さらに旅行収支が黒字化している。
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