多くの企業経営者が事業環境の変化が加速している現実にたいして危機意識を高めつつあると同時に,生き残るためには,多くのリーダーが必要になると気づき始めている。その背景には,大きく3つの要因があると思われる.
まず,第一に,技術革新が指数関数的に進んでいることである。特に,情報通信技術,遺伝子工学,ナノテクノロジー,ロボット,人工知能,センサー,ビッグデータ解析の分野では,実現する機能が急速に向上または多様化する一方で,供給コストが大きく下がりつつある。その結果,これまで製品またはサービスを事業として提供するには,技術面,コスト面で制約となって解決できず棚上げされてきた多くの問題が容易に解決できるようになってきた。
第二に,企業活動の地理的範囲が急拡大していることである。21世紀に入り中国や東南アジア諸国やインド,資源大国であるロシア,ブラジルなどの新興国が飛躍的な成長を遂げ,所得水準が年々高い率で増加した。そうした成長を見越して多くの企業が,製造または販売サービス拠点を海外に設けたため,国際貿易と直接投資が急激に拡大した。これまで国内市場で事業を展開していたコンビニエンスストア,スーパーなどの小売業や飲食店などのサービス業が,国内人口減少による成長の制約を脱するために海外出店を加速してきた。このように急速に進む経済のグローバル化は,国境を越えて企業間の相互依存関係をますます高める一方,企業間競争はますます高まってきた。
第三に,顧客ニーズが多様化しかつ高度化していることが考えられる。小売販売額に占めるインターネット通販のシェアは,我が国の5%に対して中国は10%に達する。中国の個人消費金額は,日本の倍の500兆円であるため,インターネット通販市場は50兆円の規模にまで成長している。さらに,その市場規模は年率30%前後で成長してきている。たとえば中国のアリババ集団は,amazonに対抗し,グローバル展開を加速し,世界の中間層20億人の顧客獲得を目指している。また,消費財メーカは国や文化が異なる市場に適合した商品を開発し,拡大するインターネット通販市場に投入するため,消費者の選択の幅が加速的に増大している。さらに,SNSの普及により口コミ効果が大きく製品販売に影響するようになったため,消費者を全人格的存在として認識し,マインドやハートだけでなく,その精神性に訴求できるようなマーケティング戦略を採用しつつある。人権,環境など世界的な共通課題に事業活動をつうじて積極的に取り組む企業が,消費者の精神性に訴え,消費者から高い支持を受けつつある。

アーキテクチャとは,設計構造のことである。ものを設計し製造する場合,ある機能を実現するために,構成要素である機能部品または材料を綿密の調整しながら作る方法であるインテグラルと,機能部品または材料を組み合わせる方法であるモジュラーの2つの方法がある。インテグラルの場合は,各機能部品が特定用途のために,設計し直すことが求められるが,モジュラーの場合は,個々の機能部品が多様な製品に組み込まれる。「製品・工程がインテグラル,かつ製品・システムがモジュラー」,あるいは「製品・工程がモジュラー,かつ製品・システムがインテグラル」の収益性が高い。

製品を販売して収益を上げるのではなく,製品の機能を販売して,その使用量または頻度に応じて課金する。課金する料金には,予防保全や消耗品の補充など機能の維持管理を行う。また,製品をリサイクル,リユース,リデュースしやすいように設計する。使用または稼働状況などICT技術を利用して見えるようにすることが前提となる。

需要が多いほど,生産量が増え規模の経済性が働き供給コストが下がる。また,参入する業者数も増えるので,業者間の価格競争が激しくなる。需要曲線の両端に向かうほど,希少性が増すため,高価格でも受け入れられるようになる。供給業者の数も少なるなるので,競争はほとんどない。

プラットフォームの価値は,参加者の数が増えれば増えるほど,新たな顧客を引き付け収益が増加する。また,規模の経済性,習熟が進みに運営コストが下がる。そのため,収益が指数関数的に増加する。SNSやポータルサイトなどの利益モデルである。

顧客から様々な要求,時には厳しい要求もある一方,技術供与の形で学習することもある。多数かつ多様な顧客との取引をつうじて,要素技術が蓄積される。要素技術を組み合わせれば,新たな技術を開発し,それを既存または新規の顧客に提案する。

今日,多くの市場で,多様化,個別化が進んでいる。それを大量にすばやく市場に投入し,かつ投資リスクおよびコストを低減するには,受注してから顧客の仕様に応じて組み立て出荷するまでのリードタイムを短くすると同時に,多様な部材を効率的に集められるだけの調達網を持つ必要がある。そのためには,ICT技術を導入し,リアルタイムで受注生産動向を協力会社と共有すると同時に見込み生産(プッシュ)から受注生産(プル)へと切り替える必要がある。パソコン,ストレージメーカーのDELLの事業が典型である。

業界平均よりも損益分岐点比率が低い会社(点線)は,景気の変動で数量が減って同業他社(実線)が赤字に陥っても黒字を確保できる余地が多い。利益率の差は,時間の経過とともに景気循環の波をくぐりながら,資本蓄積の差を拡大させる。習熟は一朝一夕に起こるのではないので,日々起こる問題に早く着手し,継続的に改善することによって固定費を下げることのほうが,景気の変動に合わせて,早く人員整理を行ったり,工場を閉鎖したりと生産調整を図るよりも重要な場合が多い。

累積生産量が2倍になると、単位当たりコストが20%~30%下がることが知られている。量産当初は、コストが極めて高いが、製品やサービスの累積生産量が増大するにつれ、製品・サービスの改良や改善が進み、累積されコストが減衰していく。この経験曲線のカーブを、他者よりも早く下ることが収益性を高めるポイントである。

2業界での市場シェアが高くなればなるほど,価格設定,顧客選択のうえで有利に働くため,収益性が高まる。大量生産・大量販売が当たり前の時代には,この利益モデルは有効に働いていたが,個性化,多様化する市場では,陳腐化しつつある。


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