インターネットを使って、海外商品を購入することを越境ECという。利用者は、自国では買えない海外の日用品や家電などを容易に買える。企業にとってもメリットは大きく、海外に進出しなくても海外の顧客が自社の通販サイトに買い物に来てくれるため、投資を抑えて拡販できる。経済産業省によれば、2019年における世界の越境ECの市場規模は18年見込み比約22%増の8,260億ドル(約90兆円)の見通しである。amazon.comや楽天などの大手インターネット通販をつうじ、日本のメーカーや小売りが越境ECのサービスを拡大している。訪日外国人が増加する日本では、外国人が日本の旅行中に商品を買うだけでなく、帰国後もネットで気に入った日本製品を買うことが増えている。(2019年2月18日日経)
数百万年ともされる人類史は、99%以上が狩猟採集時代で、この間ヒトは多くの動物と同様、効率良く「動く」ために身体を進化させてきた。体を動かし続けることで、腕や筋肉、骨、血液、骨、血管など臓器が適度に刺激され、機能が維持・活性化されるのはそのためである。ところが、その後の急速な文明の発展で、現代人はあまり動かなくても便利な生き方ができるようになった。ヒトの身体は生き方の変化についていけず、動かさなければ機能不全を起こしがちである。加えて獲物があるとは限らない狩猟採集時代の本能で、最もカロリーの高いものを好んで食べ、体に蓄える特性まで持ち続けている。こうした豊かな先進社会ほど、生活習慣病が蔓延する皮肉を呼んだ。旅日記などの資料によると、江戸時代後期に盛んに行われたお伊勢参りでは、1日に60㌔超えることもざらにあった。狩猟時代は狩猟キャンプの移動では、家族で1日30㌔は歩いた可能性がある。(読売2019年1月21日)
上場企業の配当と自社株買いを合わせた株主還元は2018年度に15兆円超となった。予想純利益の半分が株主に還元された。本業から生まれる営業キャッシュフローは56.4兆円、設備投資やM&Aに投じた投資キャッシュフローは44.8兆円、その差額が累積して手元現金が106兆円になっている。一方、労働分配率は5年間で50%から44%へと低下している。欧米に比べ遅れているデジタル化を加速させるために、IoT、AI(人工知能)の学習など人材投資を今後増やす必要がある。(日経2019年1月19日より)
東大の藤本隆宏教授は、平成の30年は製造業にとって苦闘の時期と指摘する。1990年代にグローバル競争とデジタル化がほぼ同時に起きた歴史的偶然により、競争環境は激変した。第1に冷戦終結で東西の貿易遮断が終わり、隣国中国が巨大な国際賃金差20分の1をもって突如市場に参入した。その結果、生産の比較優位を失った。第2にデジタル時代が到来し調整集約型のアナログ家電は調整節約型のデジタル家電にとって代わり、設計の比較優位も失った。「単位生産コスト=労働投入係数×賃金率」でみると、日本を基準にすると中国の単位生産コスト=5×1/20=1/4で4倍の開きがあり圧倒的に日本の単位生産コストは高かったが、現在、生き残りをかけた現場改善により90年以降、仮に物的生産性を倍化させた現場があったと仮定すると、10×1/4=2.5のように中国の同業の現場は圧倒的に高くなる。我が国の調整集約型製品の製造現場は、設計及び生産の両面での比較優位を生かして、高機能補完材または部品を世界に輸出する勝機が生まれている。(日経2019年1月9日より)
CO2を排出する火力発電、安全コストが膨張する原子力発電は「集中型発電」システムである。大規模な発電所から電力会社が所有する変電所および配電網をつうじて各家庭、事業主体に供給される。一方、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは「分散型発電」システムであり、分散する発電設備をネットワーク化し、大きく変動する電力の供給量と需要量を予測しながら互いに融通し合う。この分散型発電に不可欠なのが蓄電池である。発電した電力をいったん蓄積し、必要に応じて自家使用または売電することができる。すでにドイツ、日本では太陽光発電の普及を後押しする電力買い取り制度は失効が近づいており、分散型発電システムへのシフトが加速している。そのため、大容量の蓄電池の需要が急速に高まりつつある。また、川崎重工は、世界に先駆けて10万世帯に供給可能なLNG(液化天然ガス)発電船を実用化した。インドネシアなど天然ガスが豊富な地域を抱える東南アジアは島嶼が多いため、消費地の近くに発電設備を設置できるメリットは大きい。原発・火力発電事業で苦しむ日立は、ABBの送配電事業を7,000億円で買収し、IoT技術の強みを生かし、分散型発電システムの世界的な成長機会を取り込む戦略である(日経20181204,日経20181218より)。
トランプ氏の政策は、米国第一主義を理念に、ブルーカラーの工場労働者を支える男性優位の製造業を復活させることであった。その代表的な企業がGMである。米ゼネラル・モーターズ(GM)が米国内の4工場とカナダの1工場を閉鎖し、従業員14,000人を削減する。保護主義でモノの価格が上がり、消費者及び生産者の双方に影響を及ぼしている。トランプ氏が導入した鉄鋼・アルミ関税により、重要な原材料コストが増大した。米国は自動車貿易では中国に対して黒字を計上している。GMの販売台数は、米国よりも中国のほうが大きい。米国内生産がコスト増で競争力を失うのであれば、輸出向け生産工場を、中国を含む国外へ移転するほうが得策である。すでにBMWは生産を米国サウスカロライナ州から中国遼寧省瀋陽に移管した。かつてGMにとって良いことは米国にも良いと言われたが、それは遠い昔の話で、今は、GMにとって悪いことは米国にも悪いと言える(日経20181203より)。
伊藤隆俊ハーバード大博士によると、金融危機にはいくつかのパターンがある。金融危機は、家計、企業、政府の債務の水準が高まり、返済が不可能になることから始まる。1990年代後半の日本の銀行危機は不良債権型の典型である。1997年のアジア通貨危機では、民間の銀行や企業のドル建て対外債務が膨らみ、返済のためのドル調達の不安が生じた。ラテンアメリカでは繰り返される通貨危機の場合は、外国からの借入の主体が民間でなく政府である。2008~09年の世界金融危機は、米国に住む信用力の低い借り手の債務が返済不能のレベルにまで急膨張したことである。共通項はあくまで、債務の増加である。こうした視点で、現在の状況を見ると、中国の企業債務が危険なレベルまで膨張しているので、最大の不安要素である。リーマン危機以降、金融機関の債務は、自己資本規制が強化されているので、ヘッジファンドやシャドーバンク(影の銀行)を除けば、債務膨張の問題にはならない。(日経20190914より)
広東省広州市と香港を結ぶ高速鉄道(所要時間48分)が9月23日に全線開通する。香港とマカオの海上橋もほぼ完成している。産業集積を促して東京やニューヨークに匹敵する都市圏をつくる狙いがある。域内人口は約6,900万人と中国の5%に過ぎないが、GDPの12%を占める。スタートアップ企業が集積する深圳、金融センターの香港、自動車産業中心の広州、パソコン部品を製造する東莞など有力都市を抱える。2025年までに、域内GDPは310兆円(インドと同規模)、個人消費額は倍増すると予想される。香港とマカオは一国ニ制度を採用しているため、経済圏として一体化と同制度との関係が複雑となる。(日経20180913より)
香港発の人工知能(AI)スタートアップ「センスタイム」は、街頭カメラの動画1秒を24~30枚に分割し、人海戦術で意味をAIに教え込んでいく。現在、数億単位の顔データを収集している。100以上の車や人を同時識別できる。状況が複雑な市街地でも3~5秒先まで予測できる。また、カメラなどに映った人物を特定する顔認証技術は、買い物での本人確認や防犯など様々な分野で利用が広がる。監視カメラの世界市場規模は2018年に15年の倍以上に膨らむ。「センスタイム」は、人の美しさを人工知能で点数化するソフトも開発。美女か美男子かという判断について数百万人のデータを読み取り、測定基準を、顔の輪郭や目や鼻の大きさや配置など100以上の点を測定分析して、100点満点で算出することができる(日経2018年7月19日より)。
アリババ集団の「芝麻(ゴマ)信用」は、個人情報の公開、交友関係、返済能力、信用力、行動特性の5つの視点で信用度を350点(最低)から950点(最高)で格付けするAIを運用している。高スコアだと低金利で多額のお金を借りられるほか、レンタカーやホテル宿泊で保証金が不要になる(日経2018年7月18日より)。
Webからもお問い合わせ・ご相談を受け付けております。